「企業と外部とのつながりも知的資産」と認識する富士通株式会社の知的財産統括部門が、
時代に即した特許戦略・知財戦略を立案し、また社内で起こる特許がらみの問題や相談を解決するため、
数名の部員を視覚会議®ファシリテーターとして養成した事例です。
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5年先の価値を創造する、未来志向の知財戦略
富士通株式会社 知的財産統括部 林 省吾様 / 久保田 真木様
お客様の未来を創造する「未来ソリューション」
2010年から「Shaping Tomorrow With You」というブランドプロミスを掲げ、「ICTの力でお客さまと共に新しい価値を創造すること」を宣言している富士通グループ。しかし、価値観が多様化した現在では、社会や企業にとっての「新しい価値とは何か?」自体が見えにくくなっています。富士通ソリューションビジネスグループの知的財産統括部では、お客さまの新しい価値を検討する「未来ソリューションワークショップ」の手法として、2009年の秋から視覚会議®を導入しています。
「未来の世界の価値」を短時間で確実に見出す手法
林さんは「大きなブレイクスルーがなくなったICTの世界では、誰がどんな価値を求めているかを想定し、未来の世界に新しい価値を見出す必要が生じています。その為に展開してきた未来ソリューションワークショップのプロセスを検討する中で、視覚会議®の場作りツールとしての価値に気付きました。」と語ってくれました。一方久保田さんは、説得力のあるコンテクストを描ける視覚会議®の利点にまず注目したそうです。「モノづくりのモジュール化が進み、コモディティ化で価格が下がってきて、日本でモノを作る時代は終わったのでは? と感じていました。これからは “モノ” より “コト” …つまり知的資産が企業戦略に重要になると。そして、5年先のニーズを考えて未来のコンテクスト(文脈)を描くための手法としての視覚会議®は最適だったのです。」
アイデア創出で重要な「ビジョンの共有」
知的財産統括部では、お二人を含めて13名が視覚会議®のファシリテーター養成講座を受講しています。
彼らが主として視覚会議®を使っているのが、「未来ソリューションワークショップ」(新規ビジネスを検討する場)および「発明の発掘支援」(新技術の知的財産としての具体化)です。いずれもビジネスや技術の専門家と知財の担当者が一緒に新しいアイデアを創出し、具体化するプロセスですが、冒頭でも述べた冒頭でも述べたように、価値観が多様化して「モノ」が飽和している現在では、まず「どんなユーザーが何を求めているか?」というコンテクストを具体的に描き、その要望にどう応えていくか(=ビジョン)を共有する必要があります。ステークホルダー全員の "知" を集めてビジョンを描き、論点を絞った上でアイデアの創出に移ることで、より短時間で有効な「ビジネスや発明の種」が見つかるようになったそうです。システム構築のプレワークにも視覚会議®を
富士通にはもともと、システムに対する顧客の要求を明確にし、要件定義を行うための手法が存在します。しかし、ニーズ自体が「業務の効率化」から「新しい価値の創造」に移った現在、いきなり要件定義に取り掛かっても答えは見つかりません。「5年後に何をしていればいいのか分からない」という漠とした不安を解決するには、ある技術が数年後にどんな背景で使われているかを想定し、お客さまと一緒にビジョンを描く必要があります。この「要件定義に先立つ論点の絞り込み」の手法としても、視覚会議®は威力を発揮しています。お客さまとICTベンダーが共に描いたビジョンがあれば、要件定義のプロセスもスムーズに開始でき、またお客さまが納得する要件を定義できる確率が高まります。知的財産統括部では、営業担当やSEなどお客さまとの接点を持つ社員にも視覚会議ファシリテーター研修を導入させようと、社内での調整を開始しています。
富士通と外の世界をつないで価値創造する、未来の知的財産統括部へ
知的財産統括部でファシリテーター研修を受けた人の中には、他人の中に入って意見を述べ、場を取り仕切るのが苦手な人もいたそうです。しかし研修後は、堂々と人の輪の中に入っていき、自信を持って何かを確実に引き出せるようになったとのこと。多様な背景を持つ人々が集まる場で、全員が納得できる価値を引き出すことができれば、たとえば地域のNPOや住人を良い形で巻き込んで、地域密着型のCSR活動に活かせる可能性もあります。林さん・久保田さん自身が、関係会社との会議や公共の街づくりプロジェクトなど、社外でファシリテーションを実施する機会も増えているそうです。「人間や組織のノウハウ、そして外部との関係性も広い意味では “知的資産” です。」と林さん。視覚会議®を導入したことで、知的財産統括部は、従来の知財戦略や特許戦略の枠を大きく越えて、富士通と外の世界を新しい関係でつなぎ、その関係をイノベーションに活かす支援ができる部署に進化しようとしています。
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